遺留分が法定相続分の1/2であることは、前回説明の通りである。
【登場人物】
A(死亡) B(Aの妻) C(Aの子) D(Aの子)
ここで、問題なのは、遺産に対する請求はもちろんのこと、過去の贈与財産までその計算の基礎となることである。
死亡者Aの財産はほとんどなかったが、甲会社の創業者であり、20年前に、自分は会長に退き、Cを社長に任命するとともに株式もすべて贈与した。
先述の通り、C以外の相続人B及びDは貰うべき遺産も少ないため、過去の贈与財産である株式に狙いをつける。すなわち、「遺留分減殺請求」である。
こうなっては、AからCへの事業承継もままならない。
これらを防止するために、株式を遺留分の対象から外す「除外合意」「固定合意」という手段があるが、これに関しては、あらかじめ他の相続人の合意を得なければならないため、不仲であれば難しい。
ところが、この度、遺留分制度の見直しが行われた。
まず、過去の贈与をどこまで遡るかという問題に対して、「10年間」の限定とされる。
すなわち、上記の例(20年前の贈与)は当てはまらなくなり、事業承継もスムーズに行われることとなる。
次に、もし、遺留分の侵害があったとしても、その部分は金銭で精算できるようになったという点である。
これらの民法改正から、よりスムーズな事業承継が図れるのではないだろうか。