前回説明したが、改正前の民法では、「遺留分減殺請求権」を行使すると、株式などの過去の贈与財産が対象となり得るため、新たな紛争を生じる要因となる場合もあったが、この度の民法改正により、遺留分侵害額相当額を金銭での精算が可能となった。

 

しかし、金銭での精算ではなく、もし、不動産や株式などで精算した場合には、譲渡所得(所得税)の課税対象となることに注意が必要である。

 

例えば、遺留分侵害相当額が8,000万円であり、他の相続人に対して、8,000万円の金銭を支払い精算した場合

これは、譲渡所得の課税は発生しない。

 

だが、遺留分侵害相当額の8,000万円を、不動産や株式などの資産で精算した場合

税務上、その資産を8,000万円で譲渡したと判断され、譲渡所得の課税が発生する。

譲渡所得の課税は、8,000万円を収入金額として、その不動産や株式などの取得価額を差し引き、残額を所得金額として計算される。

 

もし、精算に用いた財産が、相続で取得した土地で、先祖代々引き継いできた土地の場合、取得価額が分からないケースも多い。

取得価額が分からない場合、税法では8,000万円×5%=400万円が取得価額とみなされる。

 

所得税額を試算すると、

 

収入金額8,000円-取得価額400万円=譲渡所得金額7,600万円

所得金額7,600万円×税率20.315%(長期譲渡の場合)=所得税額15,439,400円

となり、1,500万円超の所得税の納税義務が発生する。

 

相続税の納付後、間もなく、また、多額の所得税の負担が生ずることもあり、正にダブルパンチである。

 

このように、遺留分侵害相当額を金銭以外の資産で精算する場合、譲渡所得の課税金額も想定し、どの資産で精算するかの検討が必要である。

このサイトはスマートフォンの
画面を立ててご覧ください。