投資家のマネーが行き場を失っているといわれています。
日本の富裕層は日本国債などを軸とした保守的な運用を好んできましたが、マイナス金利の影響などを受けてグローバルな投資を考えざるを得なくなってきました。
海外投資の目的も、かつてのように「資産を隠す」ためのものではなくなっています。国外財産調書や国境を越えた情報交換制度の導入により海外を利用した資産隠し、脱税は不可能な時代になったと言えるでしょう。
節税や利回り目的だけではなく、国家破綻などのカントリーリスクを回避するために投資する国をいくつかの国に分散しておくことは有効な手段となります。
資産を守り、増やすにはどうすべきか。私達は税の専門家ですので、投資を節税に関連して考えてみたいと思います。
経営者にとって、王道の節税は次の売上につなげるための事業投資を行うことでしょう。増産のための新工場建設や新たな機械設備の取得、新規顧客獲得のための広告宣伝費、新製品開発のための試験研究費などは有益な投資です。しかし、ここで問題なのは設備投資の場合、つぎこんだ金額がそのまま経費とならないことです。法定耐用年数による減価償却費の範囲内でしか単年度の節税効果は得られないのです。中小企業等投資促進税制などによる特別償却や税額控除といった経費化を加速させる措置もありますが、効果は限定的です。肝心なのは将来赤字になったとしても国は一旦納税したお金を返してはくれないということです(欠損金の繰り戻し還付を除く)。
毎期継続して安定した利益が計上される企業であれば、いわゆる「先送り」の節税はあまり意味を成しませんが、先の見通せない時代において来期以降の保証はありません。将来を見据えて節税のための投資を行うことは経営の安定化に役立ちます。
生命保険や航空機など匿名組合を使ったレバレッジドリースについては皆様詳しいことと思いますので、この1年内に私が見聞きし、面白いと思った節税商品をご紹介いたします。
①ラスベガス、カリフォルニア、ニューヨーク等の中古不動産
以前から法定耐用年数を徒過した木造不動産、特に日本に比べ建物の高く減価償却を大きくとれる海外中古不動産の経営は節税に使われてきましたが、トランプ政権になって以降、米国の政策と景気浮揚に期待して複数の業者から立て続けに物件のご紹介をいただくようになってまいりました。
2016年11月には会計検査院の「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について」という報告が行われ、この節税スキームに対する問題提起がなされています。将来の税制改正も予想される中、今後の動向を見守る必要がありそうです。
②コインランドリー事業
従来の街中のコインランドリーではなく、スーパーやホームセンターなど郊外型の大型商業施設内に建設することで安定した収益をあげつつ、設置する洗濯乾燥機などの装置については生産性向上設備の認定による特別償却(即時償却)を活用し、経費化を早めるというスキームです。初年度の大きな経費計上と将来的な利回りが売りとされています。
かつて大ブームとなった太陽光発電事業に即時償却が使えなくなった結果、それに代わる事業として注目されているようです。
③高級外車投資
フェラーリ、ランボルギーニなど生産台数の少ない超高級外車に対する投資も増えてきた実感があります。注文してから納車まで数年待ちという車両も多いのですが、その分希少価値により数年後の売却時には購入時を上回る価値の上昇によって、節税と売却益のメリットを両取りされているケースを多く目にしています。
高級外車を会社所有(減価償却費の計上)して大丈夫か?というお問い合わせを相変わらず多くいただいておりますが、基本的には事業関連性(仕事に使っていること)をきちんと説明できれば何の問題もないと考えています。このテーマについては長くなりますので、また別の機会に書いてみたいと思っています。
最後にお伝えしておきたいことは「良い節税商品ほど早期に売り切れてしまう」ということです。最近では発売後、即日完売となる商品も珍しくありません。決算対策を成功に導くためには、早め早めに決算予測を行い、あらかじめ複数の選択肢を手に入れながら、スピード感のある決断をすることが最善の策だと考えています。