【税務調査の本質】

現在の日本の税制は「申告納税制度」を採用しています。この制度は国民自らが自分の所得を計算して申告し、自発的に納税する仕組みで、国民一人一人がきちんと申告してくれるだろうという「性善説」を前提とした考え方で成り立っています。そのため税務調査の役割は自主申告制度を担保するため、正しく申告している善良な納税者が不公平感を感じないための抑止力にあると言えます。

 

実際の税務調査は、それとは真逆の「性悪説」の考え方で行われています。日本中どの税務調査官も「この会社は正しい申告をしているだろう」と思って調査に来ることはありません。「何か間違いがあるはずだ」「ごまかしているだろう」と思っているからこそ、調査先に選んでいるわけです。ちなみにどのくらいの割合で税務調査は行われているのかを示す法人税の実地調査率は、国税庁の発表によると、この数年4%を割り込んでいます。4%という数字は100社のうちわずか4社しか税務調査が行われていないという事実を示しています。調査官としては調査の実績が将来の昇給や出世に影響を及ぼしますので、限られた件数の調査しか行えない中で、できるだけ何かしらの非違を見つけて終わりたいと考えています。その結果が、よく言われる「重箱の隅をつつく」ような税務調査のやり方を増加させているように感じます。

【税務調査のエピソード】

弊社ではご契約いただくと最初に「会社と個人の現状分析」を行います。会社を深く理解するため沿革、ご商売の内容、取引の流れ、お金の流れ、同業他社との差別化など、会社の状況を掘り下げてお聞きします。同じように個人の状況、ご家族の状況、保有資産の状況、趣味などのお話も伺っています。

 

たった一人で何もない裸一貫の状況から会社を設立し、成長発展させ、その過程において様々な天国と地獄を味わってこられた創業社長のサクセスストーリーは巷の小説を超えるほどのワクワクするような面白さがあり、時間を忘れてお話に聞き入ってしまうことが多々あります。

 

さらに人生を通じた最適なタックスプランのためにこれからの事業計画、人生計画、後継者へのバトンタッチ、引退後の夢など「未来」に対する想いもできるだけお聞かせいただくようにしています。本当に喜んでいただくための提案を行うためには、お客様の夢とライフプランをよく理解することが必須であると考えているからです。

 

このように今まで遭遇してきた様々なご苦労話をお聞きしていく中では、しばしば過去に行われた税務調査のエピソードも登場します。指摘事項がどのようなものであったか、追徴税額はいくらぐらいだったかという点だけではなく、どこの税務署(国税局)のなんという部署から、何名の調査官が来て、どのような雰囲気の中、何が問題とされ、どれくらいの期間調査が行われたのか、雑談も交えながら様々な事項をお聞きしていると、長年税務調査の現場にいた私達にはその時の状況が目に浮かんできます。

 

元国税調査官としては、当時の決算内容・調査の際のやり取りを見聞きするだけで、何を疑問視されて調査の対象に選ばれ、どのような項目がなぜ否認対象となり、税務当局と争いになってしまったのか容易に推測されることも多いのです。

 

そして「もっと違う経理処理をしていれば合法的に節税できたのに」「きちんとした証拠資料を準備して事実関係を正しく説明できていれば追徴は回避できたかもしれない」と感じることも少なくありません。

 

税務当局と争いが起こった際における顧問税理士の対応を振り返って「味方になってくれなかった」「自分の代わりになって戦ってくれなかった」という不満の声をお聞きすることもあります。

 

一方、税理士によってはホームページ等で「税務署と徹底的に戦います!」とアピールしている事務所もあります。たしかに納得のいかない課税に対し納税者の代理人としてきちんと主張することは大切なことです。しかし、税務調査で争いになってしまってから当局と喧々諤々やりあうことが良い対応策とは思えません。私はもっと違うアプローチでお客様をお守りすべきだと考えています。

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