前回までで税務対策の王道は大きく分けて二つに集約されるとお伝えいたしました。一つ目は「税率の差異を活用すること」、二つ目は「課税を受ける対象を変更すること」です。

今回からそれぞれの具体的な方法をお話しさせていただきます。

【税率の差異を活用する】

税メリットを最大化するためには、単一税目だけで考えるのではなく、様々な税目を複合的に考えて税金を最小化していくことが重要です。またグローバル時代においては日本国内だけの対策ではなく、海外を視野に入れることで大きな効果が得られる場合があります。

 

例えば、日本の所得税は所得が高い人ほど負担が大きくなる超過累進税率のしくみを採用しており、所得税と住民税を合計した実効税率で考えると年間の所得金額が4000万円を超える方は実に55%という高い税負担を受けます。

 

一方、外国企業の日本進出の促進や日本企業の国外流出を防ぐことを目的として、法人の実効税率は年々引き下げられ、現在は約30%(法人税だけの税率は23.2%)となっています。

 

つまり、会社も個人も一体として考えなければならないオーナー経営者にとっては、役員報酬を増額して高額な所得税を納税するよりも、法人にお金を留保し、課税を受けたほうがトータルで考えた場合、会社と経営者の資産の合算額は最大化できるという考え方になるわけです。

 

また法人税率も中小法人の場合、所得金額800万円までは15%と優遇されていますので、ひとつの会社で経営を行うのではなく、会社分割、グループ法人化などの方法を考えることで上手に利益を分散し、各法人の所得を年間800万円以下に抑えることが出来れば、企業グループ全体のトータル税コストを引き下げることが可能になります。

 

さらにグローバルに事業を展開している法人であれば、海外進出により税率の低い国に法人を置くことで、国際競争力を高めることもできるでしょう。タックスヘイブン税制、移転価格税制など国際税務特有の問題に注意する必要はありますが、トランプ政権下でアメリカの法人実効税率が引き下げられることとなり、フランスでも減税を推し進める方向にある現状において、日本は先進国の中でも法人税率の高い国であることに間違いはありません。

 

 

このサイトはスマートフォンの
画面を立ててご覧ください。