【課税を受ける対象を変更する】

 前述したように累進課税で高い税率を受ける個人から、税率の低い法人に課税を受ける対象を変更するという方法があります。

 

 多くの同族会社が行っているようにご家族を役員・従業員として雇用し、総額の給与を社長一人で受け取るのではなく、奥様、子、両親などに分散して支給することも結果として税コストの削減につながっています。課税対象が分散することで累進課税のうち低い税率が適用されるからです。

 

 家族に給与を支払うことが難しい状況であれば、毎期の報酬を抑え、その分を将来の退職金で受け取るという方法も考えられます。退職金には、長年の勤労に対する報償的給与であり今後の生活資金となるものに対し重い税金は課さないという配慮から、大きな税制上の優遇措置があります。生涯受け取る金額のうち、課税対象を毎年の役員報酬から退職金にシフトするだけで大きな納税額の差が生じることになるのです(給与所得から退職所得への変更)。

 

 将来の相続税に備え、相続人に少しずつでも時間をかけて財産を移転しておくことも有効な手段です。贈与税には年間に取得した財産の合計額が110万円であれば課税を受けないという非課税枠がありますし、非課税枠を超えた金額だとしても、贈与税率の低い範囲内で時間をかけて財産を移転できれば、相続時に一気に課税を受けるよりは、はるかに少額な税金で済むでしょう。

 

 法人で考えても、先ほどのように日本法人から税率の低い国の海外法人への課税対象変更、国内法人同士であってもグループ内の黒字企業から赤字企業への所得移転という方法も考えられます。

 

【法人と個人を一体として考える】

 過去のコラムお伝えしたように、オーナー経営者のための戦略的税務対策の要点は、オーナー企業でしかできない対策、すなわち「会社と個人を一体として考えた税務対策」を行うことにあります。

 

 法人税を支払い、かつ所得税も支払った残りで蓄えた財産にも、最終的には高額な相続税が課税されてしまう二重課税的性格をもつ制度にある日本において、自分の財産を守り、後継者に円滑に承継していくためには、法の範囲内で合法的に税コストを極限まで最小化するための知恵を働かせなければなりません。

 

 中長期的なスパンで将来のことまでを考慮しながら、税率の差異と有利な課税対象を検討し、コツコツとあらゆる角度から常に税負担を軽減するための方法を考え続けていくこと。それこそが最良の結果を導くための唯一の方法です。

 

 

このサイトはスマートフォンの
画面を立ててご覧ください。